「共存時代」論
共存時代・石原論
バカのひとつ覚えのように小学校映画を撮り続けて,その数は9本となった。
9本も小学校映画を撮ると,見えてくるものが一杯ある。辿り着いた表現も
たくさんある。
石原が小学校映画でまっ先に興味を持ったのは、子供の頃の眠りにつく、あの、なんとも言えない感覚を音と映像で表現する事だった。
眠りにつく瞬間、夢の中の世界、そして眠りから覚める瞬間。この全ての過程を小学校映画9本の中で表現してきた。そしてこの9本の中で、辿り着いた究極の表現が晩ご飯だった。
「共存時代」は究極の晩ご飯映画でもあるのだ。
食べ物がなくて困った時、近所におかずやおにぎりでも分けてくれる人がいるのか、いないのか。この差は非常に大きく、今どき、そんな地域はない、と思われるかもしれないが、少なくとも大阪の一部にはまだその文化が残っている。マンション暮らしの子供たちが、お茶碗にご飯を盛り付け、そのままエレベーターに乗って下の階に行き、仲の良い家に勝手に上がり込み
「おばちゃん、おかずちょーだい!」と言って、
あっさり、よその家の夕食にまざる、というマンションがある…
と、実話で聞いた石原は感動し、すぐさま「共存時代」の製作にとりかかった。
石原の、この、晩ご飯というテーマへのこだわりは、小学校映画をいったん終了させた今でも続き、2012年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で初披露された最新作、「大阪外道」でも見る事ができる。
石原にとって、晩ご飯は不滅のテーマなのだ。